CNNがNFTプロジェクトを放棄しラグプルとして非難される

公開日 : 2022年10月13日 | [更新日] 2024年11月01日

CNNは、主要なニュースイベントに関連したコレクター向けの「モーメント」を販売するマーケットプレイスの開発を中止すると発表しました。これにより、数千ドルを費やし、独占アクセスや将来的な機能を期待していたユーザーは怒りをあらわにしています。

パーカー・モロイ氏が指摘したように「CNNは Vault by CNNに別れを告げる時が来たと判断しました」と発表し、Web3プロジェクトを終了させました。

Vault by CNNは2021年の夏、独自のNFT（non-fungible tokens）のマーケットプレイスとして立ち上げられました。「コレクターに歴史の一片を保有できる機会を提供する」というものです。バスケットボールファンのためのものではなく、メディアオタクのためのNBAトップショットのようなもので、重要なイベントのCNNレポートやそれに触発された芸術的評価をミントして、デジタル収集品を作り、所有者はアピールしたり、野球カードのように他の人と交換できます。暗号通貨の価格が高騰し、NFTに関する見出しに「取引量は1月のピークから97％減少」といったフレーズが使われていない間は、このアイデアはより合理的に見えていました。

「暗号の冬」が落ち着くにつれ、状況は明らかに変化しましたが、Press Gazetteの4月のレポートでは、CNNは販売から30万ドル以上の収入を得たとされています。

CNN VaultはCNN Plusの16倍の時間継続

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— Vault by CNN (@vaultbycnn) October 10, 2022

VaultのDiscordチャンネルでは、Vaultのウェブサイトが変更される一方で、コレクションの閲覧やマーケットプレイスの利用は引き続き可能であることを、別のメッセージでオーナーに伝えました。コミュニティからの反応としては、ショック、失望、そして弁護士に連絡するつもりだという数人の投稿者がいます。また、CNNを「ラグプル」だと非難しています。これは暗号用語で、開発チームが突然プロジェクトからのサポート（および資金）を引き上げ、購入した人に何も残さないことを意味します。

DiscordにおいてCNNは「この実験に参加してくれた何千人ものコレクターに対して、10月6日時点で取得した各ウォレットのNFTの購入価格に基づいて分配金を補償する予定です」と述べています。CNNの別のメッセージで、スタッフのジェイソン氏は「分配金は、各コレクターのウォレットに入金されたFLOWトークンかステーブルコインのどちらかになります。詳細は現在調整中ですが、分配額は所有する各Vault NFTのオリジナルミント価格のおよそ20%になると予想しています」と述べました。彼はまた「NFTの実際のメディアはIPFSという分散ファイルシステムに保存されており、CNNのウェブサイトがなくなっても、彼らは利用し続けることができるはずです」とも述べました。

今のところ、CNNのような確立されたブランドによって発行されたトークンは、多くの怪しげなNFTプロジェクトよりもサポートされるだろうと予想しているコレクターを安心させるのに十分ではないようです。

別のメンバーは、VaultがFlowブロックチェーンに依存していることから生じる1つの不具合を指摘しました。これは、NBA Top ShotとNFL All Dayを支える同じDapper Labs製のシステムです。Flowのサポート文書には、米ドルの価値に固定されたUSDCステーブルコインで、1取引あたり最低10ドル、処理手数料4ドルで引き出しが可能だと書かれています。CNNのマーケットプレイスで最も安いNFTは19ドルで出品されています。もし誰かがその一つを所有していれば、彼らのリベートは4ドル程度、あるいはそれ以下となり、出金できたとしてもノーリターンということになります。

ウォレットアドレスを教えてくれたある人物に話を聞くと、そのマーケットプレイスから11,000ドルものCNNトークンを購入したことが分かりました。継続的なサポートがなく、20％のリベートを受けた後では、コレクションの価値がその水準に近いままであると考えられる理由はほとんどないでしょう。

さらに、先月の時点でも、CNNはコミュニティメンバーに対して、11月8日に予定されている「Art of Voting NFTシリーズ」などのイベントに参加するためにトークンを購入するよう呼びかけていました。コレクターは、Art of Votingセットにアクセスするためのキーと、その他の「限定特典」を得るために、特定のセットから少なくとも1つのNFTを所有する必要がありました。Vault by CNNの資料には「ユーティリティ」を説明する箇所があり、Exclusive CNN PerksとExclusive CNN Vault Merchを「近日公開」と記しています。約束された機能のロードマップには、今年の後半には、何らかの形でCNNの記事をNFTとしてミントできるようにする、と書かれていました。

1月に開設されたAP通信のNFTマーケットプレイスではアクティビティがほとんどなくDiscordのリンクも切れている状態

閉鎖の具体的な理由は書かれていませんでしたが、Wall Street Journalは今年の5月3日に「NFTの売上は横ばい」と書き、それ以来状況は好転していません。一方、Vault by CNNは、3月に開始され、ちょうど1ヵ月後に終了したCNN Plusストリーミングの取り組みの約16倍の期間存続できました。

Vaultマーケットプレイスのウェブサイト（閉鎖についての記述はない）によると、発表前の直近の取引は5日前の10月5日、ネルソン・マンデラの刑務所からの解放を記念した「CNN Defining Moments」トークンを77ドルで購入した人がいました。

Discordのメッセージは、CNNが売れ残ったNFTを「バーン」する計画を保有者に知らせ、それによって保有するNFTがより希少になるとして「実験」に参加するコレクターに感謝する内容も含まれています。今日のVaultの閉鎖に関するメッセージまで、CNNの広範なツイート、Discord放送、報道資料の中に、このプロジェクトが「実験」であるという言及は見つかりませんでした。CNN広報のギャレット・コワン氏はメールのメッセージで言及された6週間の実験は、2021年6月の一般公開に先立つ内部テストだったとTheVergeに説明しています。

CNNは、ここ数年のいわゆる「ブルラン」時にNFTを立ち上げたものの、コミュニティの期待に応えられなかった多くの有名ブランドや著名人の一人に過ぎません。

NBAのスター選手であるDe’Aaron Foxは、Swipathefoxプロジェクトで150万ドルを集めた後、約束した利益を提供することなく閉鎖したため、ラグプルとして非難されました。また、Michael Carter-Williams や Jerami Grantなどのアスリートが推進したPlayer’s Only NFT活動は、140万ドルを集めましたが約束した報酬の提供に苦戦しました。

NBA Top Shot の価格とアクティビティはピーク時から急激に低下し、NFL All Day がどうなっているのかは、それについて話す人がいないので不明です。NHL は 7 月に NFT マーケットプレイスの立ち上げを発表しましたが、実際には立ち上げておらず、プロジェクトに関する詳細も共有していません。Lucky Traderは、Flowでも運営されているUFC StrikeのNFTマーケットプレイスが、あるユーザーがいくつかのドロップを悪用してレアアイテムを入手したため、パックドロップを一時停止して購入者に一部を返金をしたと報告しています。

メディア関連では、AP通信が1月の価格ピークと同時にNFTマーケットプレイスを立ち上げ、収益をジャーナリズム活動の資金に充てることを表明し、議論を呼びました。APのNFTマーケットプレイスは、最近の下落でほとんど動きがなく、プロジェクトのDiscordを指すページ上のリンクは、いくつかのアカウントでは機能しませんでしたが、APのWeb3リーダーであるDwayne Desaulniersによると、それはまだ機能しているとのことです。The Vergeへのメールでは、APは今後もNFTをミントしていくとし、現在の活動レベルやそのユーザー数についての質問には回答しませんでした。

UFC Strikeについては「UFCとDapper Labsが提携しNFT UFC Strike の立ち上げを発表」で解説しています。ぜひ、参考にして下さい。